专利摘要:
本発明は、フラビウイルス科の突然変異体ウイルスであって、カプシドタンパク質中に少なくとも20個の連続するアミノ酸の欠失を含み、欠失に隣接する、置換されていてもよいアミノ酸を除いて、さらなる欠失、置換または挿入突然変異を伴わないウイルスに関する。
公开号:JP2011510672A
申请号:JP2010545473
申请日:2009-02-06
公开日:2011-04-07
发明作者:アンドレアス・マインケ;クリスティアン・マントル;フランツ・イックス・ハインツ;ペトラ・シュリック
申请人:インターツェル・アクチェンゲゼルシャフトIntercell Ag;
IPC主号:C12N15-09
专利说明:

[0001] 本発明は、ワクチンのための突然変異したフラビウイルス科に関する。]
背景技術

[0002] フラビウイルス科は、3種の属、フラビウイルス属、ペスチウイルス属およびヘパシウイルス属を含む。]
[0003] フラビウイルス属は、主に、蚊またはダニによって媒介されるウイルスを含み、それらの多くは、ヒト、およびまた動物の重要な病原体である。特に重要なものとして、黄熱(YF)ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、デング熱(Den)ウイルスの4種の血清型、ダニ媒介性脳炎(TBE)ウイルスならびにまたヒトおよび種々のトリの種における病原体として北アメリカにおいて最近現れたウエストナイル(WN)ウイルスがある。]
[0004] ペスチウイルス属は、経済上重要である動物病原体、すなわち、ブタ熱(classical porcine fever)(CPF)ウイルス、ウシウイルス性下痢(BVD)ウイルスおよびボーダー病ウイルス(BDV)を含む。]
[0005] ヘパシウイルス属は、C型肝炎ウイルス(HCV)および関連ウイルスの種々のサブタイプを含む。]
[0006] これら3種の属は、この科のすべての代表物がほぼ同一のゲノム構造を有し、多数の構造および機能特性の一致を示すので、フラビウイルス科の中で一緒にされる。すべてのフラビウイルスは、ゲノムとしてmRNA極性を有する一本鎖RNA分子を含む、比較的小さい、エンベロープウイルスである。ゲノムは、ポリプロテインの形態のすべてのタンパク質をコードする長いオープンリーディングフレームを有する。個々の成熟ウイルスタンパク質は、ウイルス性および細胞性プロテアーゼの活性によって形成される。ゲノム中の個々のウイルスタンパク質の配列は、すべてのフラビウイルスについて同一であり、5’末端で、カプシドタンパク質で始まり、表面タンパク質および一連の非構造タンパク質、それらの最後はウイルスポリメラーゼである。特別の特徴として、ペスチウイルスは、カプシドタンパク質の前に自己プロテアーゼをさらに含む。フラビウイルスのヌクレオカプシドは、ただ1種の単一のウイルスタンパク質、すなわち、カプシドタンパク質によって形成され、ウイルスゲノムを囲んでいる。]
[0007] カプシドタンパク質のほとんどの正確な三次元構造は、ウエストナイルウイルス(Dokland et al., 2004;PDB acc. 1SFK)およびデング熱ウイルス(Ma et al., 2004;PDB acc. 1R6R)について知られており、これらは、極めてうまく重なる。さらに、さらなるフラビウイルス科カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、多数の相関を有し、その結果、多数の構造類似性が存在する。同一属の代表物における類似性は、異なる属の代表物間よりもいっそう大きい。すべての例で、カプシドタンパク質は、約100〜190個のアミノ酸の長さを有する、かなり小さいタンパク質である。塩基性アミノ酸の、すなわち、アミノ酸リシンおよびアルギニンの著しく大きい部分を有する。塩基性アミノ酸は、ウイルスRNAとの相互作用にとって重要であると想定される(Khromykh and Westaway, 1996)。しかし、すべてのフラビウイルスカプシドタンパク質はまた、特徴的な疎水性部分も有する。このような疎水性部分は、常に、カルボキシ末端の約20個のアミノ酸によって形成される。この部分は、ゲノム配列に続く表面構造タンパク質の内部シグナル配列として働く。タンパク質合成の間に、エンドプラスマチックレチクルム(endoplasmatic reticulum)の膜に組み込まれるこのシグナル配列によって、カプシドタンパク質は、まず膜中に固定される。後に、アンカーがタンパク質分解によって切断される。さらに、内部疎水性部分がある。フラビウイルス属の代表物では、内部疎水性ドメインの機能的な重要性が記載されている(Markoff et al. 1997)。著者らは、一連のフラビウイルスのこのドメインの境界を以下のように示した:デング熱1:46〜67、デング熱2:46〜66、デング熱3:46〜67、デング熱4:45〜65、日本脳炎:46〜62、ウエストナイル:46〜62、マレー渓谷脳炎:46〜62、セントルイス脳炎:45〜61、黄熱:43〜58、ランガット:42〜54、ポワッサン:40〜52、TBE:42〜54。また、C型肝炎ウイルスについては、アミノ酸119から145、特に125から144に及ぶ、機能的に重要な内部疎水性ドメインが同定されている(Hope and McLauchlan, 2000)。また、ペスチウイルスは、主に疎水性の特性の短い内部部分を有する。]
[0008] ワクチンは、いくつかのフラビウイルスに対して成功裏に使用されてきた。したがって、YFウイルス、JEウイルスおよびCPFウイルスに対する生ワクチンがあり、JEおよびTBEに対して不活化ワクチンが使用されている。ヒトおよび獣医学におけるフラビウイルスの大きな重要性を考慮して、新規の、改善されたワクチンの開発には大きな需要がある。]
[0009] その弱毒化が、ゲノムの種々の領域における突然変異に基づいている一連の弱毒化フラビウイルスが知られている。弱毒化突然変異は、中和抗体の存在下での突然変異体の選択によって調製された、実験室におけるウイルスの連続継代によって得られた天然に存在する株において、または組換えクローニング技術を用いた突然変異の標的化導入によってのいずれかで観察されている。数種のフラビウイルスの感染性cDNAクローンが存在し、当業者ならば、このようなクローンの調製方法は承知している。先行技術に従って、これらの感染性cDNAクローンを用いて、フラビウイルスのゲノムに突然変異を特異的に導入することができる。]
[0010] 弱毒化フラビウイルスの既知突然変異は、ゲノムの以下の部分に見出されている:]
[0011] エンベロープタンパク質:弱毒化突然変異の観察結果のほとんどは、エンベロープタンパク質E(フラビウイルス属)(McMinn, 1997;新しい、例えば、Mandl et al., 2000に概説される)に関する。同様に、タンパク質E(rns)(ペスチウイルス属)中の弱毒化突然変異が記載されている(Meyers et al., 1999)。]
[0012] 非構造タンパク質:クンジンウイルスのタンパク質NS1中の点突然変異が、複製の遅延、ひいては、弱毒化につながった(Hall et al., 1999)。弱毒化突然変異はまた、タンパク質NS3(Butrapet et al., 2000)およびNS5(Xie et al., 1998)においても記載されている。]
[0013] 非コードゲノム部分:3’末端非コード領域中の欠失によるTBEウイルスの弱毒化が記載されている(Mandl et al., 1998)。デング熱ウイルスを用いて、5’および3’非コード領域両方に欠失を有する実験的ワクチンが調製されている(Lai et al., 1998)。これらのウイルスの弱毒化の分子的機序は、これらの突然変異によるウイルス複製に対する悪影響であると推測される。]
[0014] EP1373478B1には、カプシドタンパク質中に欠失を有する弱毒化フラビウイルスが記載されている。]
発明が解決しようとする課題

[0015] 本発明の目的は、カプシドタンパク質中に、特に、ウイルスカプシドタンパク質の1部位のみに最小部位の突然変異を有し、細胞培養で継代され得、毒性表現型への復帰に抵抗性がある弱毒化フラビウイルスを提供することである。]
課題を解決するための手段

[0016] この目的は、特許請求の範囲の内容によって達成される。特に、本発明は、フラビウイルス科の突然変異体ウイルスであって、カプシドタンパク質中に少なくとも20個の連続するアミノ酸の欠失を含み、欠失に隣接する、置換されている場合があるアミノ酸を除いて、カプシドタンパク質中の任意のさらなる欠失、置換または挿入突然変異を伴わない、ウイルスを提供する。したがって、本発明のカプシドタンパク質は、1部位の変更、すなわち、少なくとも20個のアミノ酸の比較的大きな欠失のみを含む。この欠失に隣接するアミノ酸は、アミノ酸置換突然変異の対象であり得る。これは、カプシドタンパク質をコードするヌクレオチドレベルでの欠失によって引き起こされ得る。ヌクレオチドの1つの欠失は、そのアミノ酸欠失をコードしたであろうものと正確に同一のヌクレオチドトリプレットの欠失を必ずしも必要とするわけではない。いずれかの末端で1または2ヌクレオチドのシフトが起こり得るが、残りの配列は、依然としてインフレームでなくてはならない。これは、欠失が、その欠失の5’のヌクレオチドを除去し、同時に、1つのさらなるヌクレオチドが、欠失したフレームに隣接する3’末端トリプレットの隣にあるままであるということを意味する。この場合には、新しい5’トリプレット(欠失していない)は、欠失に隣接する5’トリプレットの最初の2つのヌクレオチドおよび欠失の3’末端に由来する1つのヌクレオチド(最後の欠失したアミノ酸をコードする最後のヌクレオチド)を含んで残る。これは、ヌクレオチドレベルでは、1つの欠失しか起きていない(いかなる置換さえも伴わない)が、欠失の隣のカプシドアミノ酸配列の置換突然変異につながり得る。当然、5’(欠失していない)トリプレットが、2つのヌクレオチドを欠き、元々、欠失の3’末端に由来する2つのヌクレオチドを受け取る、または欠失の3’末端で1つもしくは2つのヌクレオチドが除去され、欠失の5’末端によって補完されるさらなる組合せがあり得る。したがって、残りのヌクレオチド配列については、フレームシフトは起こらない。]
[0017] 本発明は、フラビウイルスの代表物すべてに適用可能である。したがって、本出願の範囲内で、用語「フラビウイルス」は、フラビウイルス属の代表物のみが意味されると明確に指摘される場合を除き、フラビウイルス科の代表物すべてに関する。ウイルスは、フラビウイルス(属)、ペスチウイルスまたはヘパシウイルス、特に、節足動物媒介性ウイルスであることが好ましく、より特に好ましい実施形態では、蚊媒介性ウイルスである。本発明が実現化されるフラビウイルスの特に好ましい代表物は、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルスの4種の血清型、ダニ媒介性脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ポワッサンウイルス、ブタ熱ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ボーダー病ウイルスおよびC型肝炎ウイルスからなる群から選択される。これらの代表物は、これらの代表物に関して、適した弱毒化生ワクチンに対する需要が特に高いので、ヒトおよび動物に関するその既知病原性のために、本発明に特に適している。特定の好ましいウイルスとして、ウエストナイルウイルス、日本脳炎ウイルスおよびデング熱ウイルスがある。]
[0018] 一連の弱毒化フラビウイルスが、先行技術においてすでに記載されており、EP1373478B1には、カプシドタンパク質中の欠失が、フラビウイルスに対する有利な弱毒化原理として記載されているが、本発明に従う大きなカプシドタンパク質欠失を含むフラビウイルスが、フラビウイルスの信頼できる弱毒化につながり、細胞培養物において効率的に製造でき、フラビウイルス生ワクチンとして使用してもよいということは驚くべきことであった。本発明に従う、かなりのカプシドタンパク質突然変異にもかかわらず、生ワクチンとして本発明のウイルスを投与した後に、ワクチン接種された被験体において弱毒化ウイルスの増殖が起こり得る。この結果は、不活化ワクチンを上回る一連の利点をもたらす。]
[0019] 特に驚くべきことは、本発明のフラビウイルス突然変異体が、細胞培養で継代され得るということを見出したことであった。細胞培養で、生ワクチンを効率的に継代する能力は、このようなワクチンの費用効率が高い製造、増幅および増殖にとって決定的な利点に相当し得る。さらに、本発明のフラビウイルス突然変異体はまた、それらが承認された細胞株において製造でき、安全上の問題を構成し得る動物増殖系を必要としないので、安全性および法的な要求事項に関して特に有利である。]
[0020] さらに、本発明の突然変異体は、毒性表現型への復帰に特に抵抗性があり、したがって、ヒトにおける広範な適用に素晴らしく適している。特に、少なくとも20個のアミノ酸の欠失は、約100個〜180個のアミノ酸のカプシドタンパク質にとって大きいものであるが、細胞培養で継代され得る安定なウイルスを得ることができ、したがって、特定の、もしくは脆弱な増殖体制を必要とすることなく、かつ/またはカプシドタンパク質中のその他の遺伝子座にさらなる突然変異を導入することなく効率的に製造することができるということが見出された。]
[0021] したがって、本発明は、これまでに記載された形態の生ワクチンを上回る意味のある利点を有する:
・毒性表現型の野生型配列への復帰の危険は、欠失の長さと逆相関しているので、より長い欠失が、安全性をより強力に増大させる、
・さらなる突然変異のために選択する必要を伴わず、単一の欠失突然変異のみを導入することは、フラビウイルス生ワクチンを作製するためのより簡単な、より直接のアプローチである、
・細胞培養で生ワクチンを継代する能力は、ワクチンの製造にとって有利であり、細胞培養で増殖したウイルス粒子としての適用を可能にする。]
[0022] 用語「細胞培養で継代され得る」とは、本明細書において、ウイルス突然変異体の、細胞株に効率的に感染し、これらの細胞の培養物において増幅および蔓延する特徴を定義するよう使用される。適当な細胞株は、以下に記載されるように選択され得る。このような細胞培養物から得られた上清を使用して、新しい培養細胞に感染させることができる、すなわち、これらの生ワクチンは、細胞培養物で継代され得る。]
[0023] 用語「生ワクチン」とは、本明細書において、ウイルスワクチンのウイルス粒子、成分または核酸が、宿主においてin vivoで自己増殖可能であり、タンパク質発現できることを意味する。この生ワクチンの定義は、感染粒子、1ラウンド感染性ウイルス様粒子および自己複製性核酸(レプリコン)を含む。これらの調製物のすべては、共通の特徴として、宿主において自己増殖し、in vivoでウイルス成分(核酸およびタンパク質)を産生し、ひいては、野生型ウイルス感染の経過においてと同様に自然および適応免疫応答を刺激する。さらに、細胞培養において継代され得る(上記で定義のように)生ワクチンのサブグループが含まれる。生ワクチンの定義は、非複製ワクチン、すなわち、不活化ワクチン、サブユニットワクチン(すなわち、感染性ウイルスからの分離によって、または組換え発現によってのいずれかで調製されたウイルスのタンパク質成分)および自己複製できないDNAもしくはRNAからなる非複製性核酸ワクチンのいずれも含まない。]
[0024] 用語「感染性」または「感染性の」は、本明細書において、ウイルス粒子または核酸の、適した宿主細胞において自己増幅を開始する能力を説明するために使用される。したがって、「感染性」または「感染性の」は、特性が、感染性物質または成分の特性、および宿主細胞の特性の両方、ならびに物質/成分の宿主細胞への導入様式に応じて変わるので、特性というよりも過程を説明する。例えば、ウイルス粒子は、いくつかの細胞に対して感染性であり、その他のものに対して感染性ではない場合がある。いくつかの核酸は、細胞に、適切にトランスフェクトされ(例えば、エレクトロポレーションまたは遺伝子銃衝撃)、そこで、自己複製のサイクルを開始する場合には感染性であり、不適切な様式の接種時には、感染性ではない場合もある。サブウイルス粒子は、「1ラウンド感染性」であり得る、すなわち、自己複製核酸が、宿主細胞に入るのを1回のみ媒介できる。]
[0025] 「弱毒化」または「弱毒化された」とは、本明細書において、ウイルス毒性の低減を意味する。毒性は、ウイルスの、特定の宿主において疾患を引き起こす能力として定義される。したがって、用語「弱毒化」は、「病原性が低い」または、時には、「非病原性」と同義である。]
[0026] 用語「生存力」とは、しばしば、先行技術においてウイルス生ワクチンとの関連で使用される。しかし、ウイルスは、自律的生物ではなく、むしろ適当な宿主細胞によって増幅され得る化学構造であるので、生存力という用語は、本発明の説明では明確には定義されず、したがって、避けられる。より一般的な意味では、ウイルス生存力は、宿主細胞における自己増幅のためのウイルス粒子、成分または核酸の能力を意味する。例えば、EP1373478B1では、生存力という用語は、この広い意味で使用されている。前記の広い意味では、生存力という用語は、本明細書において定義される生ワクチンの定義と同義である。より制限された意味では、ウイルス生存力はまた、本明細書において定義される「細胞培養において継代され得る」を意味し得る。]
[0027] 従来の不活化ワクチンの調製のためには、多量の感染性および毒性ウイルスを製造することが必要である。また、組換えによって調製された不活化ワクチンを用いて、多量の抗原が製造され、精製されなければならない。生ウイルスを用いる場合には、製造されるべき量は、ウイルスタンパク質および核酸が、ワクチン接種された被験体の身体内で製造されるので実質的には少なく、それによって、生ワクチンの製造コストは、通常、不活化ワクチンのものよりも実質的に低い。さらに、毒性ではない、非病原体ウイルスが製造され、したがって、製造は、健康上のリスクを含まない。従来の不活化フラビウイルスワクチンは、ホルマリンで処理し、抗原構造の特定の変化を引き起こすことによって感染粒子を不活化することによって調製する。ワクチン接種された被験体では、主に、その抗原構造が、天然の形態とは正確には対応しない構造タンパク質に対する体液性免疫応答が誘導されるが、長期持続性免疫の発達にとって、また細胞傷害性T細胞の形成にとって、その重要性が極めて高い非構造タンパク質に対する免疫応答は誘導されない。欠失とは別に、本発明のウイルスは、カプシドタンパク質中にさらなる突然変異を含まず、したがって、残りの改変されていないウイルスタンパク質および改変されていない部分は、免疫系の刺激のための優れた細胞標的である。]
[0028] 本発明の弱毒化フラビウイルスは、特に、その好ましい実施形態によれば、遺伝子工学法によって調製されるワクチンおよび実験用生ワクチンのために使用される従来のフラビウイルスを上回るいっそうさらなる利点をさらに有する。]
[0029] 現在使用されるフラビウイルス生ワクチンは、通常、実験室で何度も継代され、これが複数の突然変異につながり、これらのウイルスの生物学について、詳細なその意味は、まだ完全には理解されておらず、これらのウイルスの弱毒化へのその個々の寄与および個々の弱毒化突然変異間の相互作用はまだ完全にはわかってない(JEについては、Nitayaphan et al., 1990参照のこと;YFについては、Post et al., 1992参照のこと;CPFについては、Bjorklund et al., 1998参照のこと)。いくつかの突然変異はまた、免疫応答にとって特に重要である抗原、例えば、表面タンパク質E中に位置する。したがって、特定の抗原決定基が、野生型ウイルスと比較して、変更された形態で存在する。これらのウイルスの弱毒化の遺伝的機序の複雑性のために、その他のフラビウイルスへの弱毒化の機序を形成する原理の直接適用が可能とならない。]
[0030] 対照的に、本発明の突然変異ウイルスでは、規定された、通常適用可能な弱毒化された突然変異のみが、カプシドタンパク質に導入され、それによって、免疫応答にとって特に重要であるタンパク質(エンベロープタンパク質または特定の非構造タンパク質、例えば、フラビウイルス属におけるNS1)を変更する必要がない。したがって、本発明のウイルスの好ましい実施形態は、特に、免疫応答に関与するエンベロープタンパク質には、ならびに、その他のタンパク質にはさらなる突然変異を含まない。]
[0031] また、上記ですでに記載されているように、弱毒化が、点突然変異に基づいている、一連の遺伝子操作された弱毒化フラビウイルスが記載されている。これらについては、遺伝的に復帰することは比較的容易である。また、点突然変異によって弱毒化されたウイルスの、第2の点突然変異による毒性表現型への復帰も記載されている(Mandl et al., 2000)。対照的に、本発明のウイルスでは、弱毒化は、欠失によって達成されており、その野生型への復帰は不可能である。]
[0032] さらなる記載された事例では、弱毒化は、免疫応答にとって重要であるエンベロープタンパク質における変化、または複製および翻訳にとって重要であるゲノムの部分における変化に基づいている。できる限り自然の、効率的な免疫応答が誘発されるべきである場合には、エンベロープタンパク質の抗原構造における変化も、複製または翻訳に対する実質的な悪影響も望ましくない。これらの不利点は、いずれかのエンベロープタンパク質ではなく、単に、内部構造成分、非構造タンパク質または調節性非コード部分が変更されている本発明によって克服される。]
[0033] さらなる設定では、ウイルスは、種々のウイルスを組み合わせることによって調製されている(キメラウイルス)(Guirakhoo et al., 2000)。キメラウイルスは、病原性ウイルスの遺伝子が、天然に存在しない方法で、互いに新たに組み合わされている生物であり、ワクチン接種による、このようなウイルスの放出は、これらのキメラウイルスが、その特性を予測できない新規ウイルスに発達する危険をはらむ。対照的に、新規ウイルスは、種々のウイルスゲノムの組合せを構成せず、したがって、ワクチン接種による放出が、これまでに天然に存在しないウイルス種の形成を引き起こすことはあり得ない。]
[0034] 例えば、組換え技術を用いる、フラビウイルスのカプシドタンパク質への本発明の欠失の導入は、過度の実験的負担を伴うことなく、それ自体公知の方法を使用することによって任意の当業者にとって可能である。それぞれのカプシドタンパク質をコードする遺伝子部分は、今日までにそのゲノム配列が得られているすべてのフラビウイルスについて知られており、新規フラビウイルス配列については、それは配列比較によって容易に決定され得る。もちろん、この場合の欠失は、カルボキシ末端疎水性領域が、欠失によって影響を受けるような、リーディングフレームの何らかのシフトにつながってはならない。このカルボキシ末端疎水性領域にとって、大きく維持され、したがって、欠失によって影響を受けないことは不可欠である。記載される技術を用いて、突然変異体、天然型で形成されているカプシドタンパク質を除く、すべてのウイルスタンパク質を有する感染性ウイルスを増殖させることが可能である。その結果、これらのウイルスの複製および翻訳は、制限されないか、本質的に制限されない。細胞培養で増殖させることによって、これらのウイルスから、ワクチンとして使用できる調製物が製造され得る。本発明のウイルスは、変更されていない野生型ウイルスとは対照的に、適当な宿主生物に接種された後、弱毒化表現型を示す、すなわち、それらは疾患を引き起こさない。しかし、それらは、特異的免疫応答の形成は誘導する。本発明のフラビウイルス生ワクチンで免疫化された宿主生物は、毒性野生型でのその後の感染から保護される、すなわち、保護されていない生物とは対照的に、野生型ウイルスによって引き起こされる疾患が生じない。]
[0035] ワクチンとして適した突然変異体の調製において、それによってワクチンの特性が改善され得るいくつかの特徴に注意が払われる場合には、カプシドタンパク質の領域中の本発明の欠失は、生ワクチンとして適したウイルス突然変異体を調製するのに特によく適している。毒性ウイルス型への復帰の危険のない、適した弱毒化免疫原性ウイルスを調製するよう、本発明に従って提供される欠失は、20個のアミノ酸よりも大きい。]
[0036] 本発明のフラビウイルスカプシドタンパク質の欠失はまた、特に、少なくとも21個、好ましくは、少なくとも22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36個または少なくとも37個の連続するアミノ酸の大きな欠失を含み得る。特定の実施形態では、細胞培養物における効率的な増幅を可能にし、したがって、安定な製造およびあまり改変されていないウイルスカプシドを可能にするには、上限は、48個の欠失されたアミノ酸である。したがって、本発明は、最大47個、好ましくは、最大46、45、44、43、42、41、40、39、38、37個または最大36個のアミノ酸の欠失を有するフラビウイルスカプシドタンパク質に関する。]
[0037] 好ましくは、欠失は、アミノ末端まで20個のアミノ酸まで、および/またはカルボキシ末端シグナル配列の開始の直前までに達し得る。]
[0038] 特に、ウイルスは、細胞培養物において継代され得、好ましくは少なくとも2継代後に、安定である。本明細書において、安定性とは、特に、カプシドタンパク質の遺伝的安定性を指す。ウイルスは、本明細書において定義される欠失とは別に、さらなる突然変異を示さないことについて選択される。ウイルスは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9継代または少なくとも10継代後に遺伝的に安定であり得る。]
[0039] フラビウイルスの単一のウイルスカプシド分子は、4つのαへリックスを含み、1層にαヘリックス1を、中央層にヘリックス2を、第3層にヘリックス4を有する三層構造を形成する。αヘリックス3は、スペーサーとして働く。このカプシドは、二量体を形成し、これは、再度二量体化し四量体となる。この組立てのためには、へリックス1および4は、ヘリックス2および、特に、ヘリックス3よりも極めて重要である。したがって、欠失は、これらの中間のへリックス2および3において生じることが好ましい。一実施形態では、全へリックスα2およびα3が欠失される。ヘリックス4のN末端も、欠失によって影響を受け得る。本発明の好ましい実施形態では、ヘリックスα2のC末端部分、全ヘリックスα3、およびヘリックスα4のN末端部分が欠失される。ヘリックスα2および4の残りの部分は、融合ヘリックスを形成し、それによって、3層の代わりに2層を形成し得る。したがって、特定の実施形態では、欠失は、野生型ウイルスカプシドタンパク質のαヘリックス2の少なくとも1個のアミノ酸を、好ましくは、ヘリックス2のアミノ酸の少なくとも3分の1を、より好ましくは、ヘリックス2のアミノ酸の少なくとも半分を含む。一実施形態では、欠失は、ヘリックス2のC末端アミノ酸を含む。さらなる実施形態では、欠失は、野生型ウイルスカプシドタンパク質のαヘリックス3の少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは、ヘリックス3のアミノ酸の少なくとも3分の1、より好ましくは、ヘリックス3のアミノ酸の少なくとも3分の2、最も好ましくは、全ヘリックス3を含む。特定の実施形態では、欠失は、野生型ウイルスカプシドタンパク質のαヘリックス4の少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは、ヘリックス4のアミノ酸の少なくとも3分の1、より好ましくは、より好ましくは、ヘリックス4のアミノ酸の少なくとも半分を含む。一実施形態では、欠失は、ヘリックス4のN末端アミノ酸を含む。ヘリックス1は、欠失によって影響を受けず、および/またはヘリックス4のアミノ酸の少なくとも3分の1、好ましくは、少なくとも3分の2もしくは4分の3が、欠失によって影響を受けないことが好ましい。]
[0040] 好ましい実施形態では、カプシドタンパク質のカルボキシ末端疎水性領域は、欠失によって影響を受けない−本発明の欠失は、カプシドタンパク質のカルボキシ末端疎水性領域を含まない。この配列は、ゲノム上で隣接してコードされており、エンベロープタンパク質の正しい形成にとって必要であること、および成熟カプシドタンパク質からタンパク質分解切断によって除去されることがわかっている。このシグナル配列の長さは、個々のフラビウイルス間で変わるが、親水性プロフィールをはっきりさせることによって容易に決定できる(図1参照のこと)。したがって、好ましい実施形態では、本発明の欠失は、このカルボキシ末端領域を含まない。]
[0041] カルボキシ末端疎水性領域は、少なくとも、−1以下の図1の親水性スコアを有する、この領域中のすべてのアミノ酸に関する。図1に従って、0を下回る親水性を有するC末端領域は変更されないままであることが、特に好ましい。]
[0042] 本発明の好ましい欠失は、内部疎水性ドメインの領域に関する。図1から、すべてのフラビウイルスのカプシド配列は、上記で示されるカルボキシ末端の疎水性シグナル配列に加え、そうでなければ主に親水性のアミノ酸鎖の中央に、主に疎水性の部分をさらに含むということがわかる。これらの内部ドメインの領域が、部分的に、または完全に除去される欠失によって、特に適した弱毒化フラビウイルス生ワクチンが生じる。「内部疎水性ドメイン」として、図1で負の親水性スコアを有する、少なくともすべてのそれらの領域が考えられ得る。]
[0043] 図2では、本発明のウイルスにおいて少なくとも部分的に欠失され得る、特に好ましい疎水性領域が、いくつかのフラビウイルスについて特性決定されている。これらの領域は、それぞれのアミノ酸配列の疎水性プロフィールを算出することによって決定できる。図2中の下線が引かれた領域は、KyteおよびDoolittle(1982)のアルゴリズムを用い、5のウィンドウサイズを用いて算出されている。あるいは、疎水性領域はまた、5から13の間のアミノ酸残基のウィンドウサイズを用いて、または通常、3から11の間のウィンドウサイズが選択され得るHoppおよびWoodsのもの(1981)などのその他のアルゴリズムによって算出できる。] 図2
[0044] 図1の親水性ブロットは、9アミノ酸残基のウィンドウサイズを用いて、KyteおよびDoolittle(1982)のアルゴリズム、またはそれぞれ、7アミノ酸残基のウィンドウサイズを用いて、HoppおよびWoods(1981)のアルゴリズムに従って算出された。好ましい疎水性領域は、デング熱1:46〜67、デング熱2:46〜66、デング熱3:46〜67、デング熱4:45〜65、日本脳炎:46〜62、ウエストナイル:46〜62、マレー渓谷脳炎:46〜62、セントルイス脳炎:45〜61、黄熱:43〜58、ランガット:42〜54、ポワッサン:40〜52、TBE:42〜54、およびHCV:119〜145、特に、125〜144から選択される。]
[0045] 欠失に隣接する許容可能な置換突然変異は、それによってカプシドタンパク質の疎水性が増大される点突然変異から選択されることが好ましい。特に好ましい点突然変異は、荷電アミノ酸または親水性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、セリンなどといった)をそれぞれ、極性の低いアミノ酸または非極性アミノ酸(例えば、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、バリンなどといった)に交換することを含む。]
[0046] 本発明のカプシドタンパク質C中の欠失突然変異は、例えば、生ワクチンの弱毒化表現型をさらに調節するよう、フラビウイルスゲノム中の他の場所(カプシドタンパク質Cをコードする遺伝子の外側)の突然変異と組み合わせることができる。]
[0047] さらなる態様では、本発明はまた、上記で定義されるウイルスを含む医薬組成物、好ましくは、ワクチンに関する。特に、生フラウイルス(flaviruses)を含む医薬組成物を、免疫化目的で生ワクチンとして使用できる。]
[0048] 本発明の組成物では、効率的な免疫化のために、わずかな量のウイルスしか必要でなく、その結果、本発明の組成物を用いて、投与あたり、101〜107、好ましくは、102〜106、特に、103〜105感染単位のフラビウイルスで十分である。この量の感染単位を含む単回用量としてワクチンを投与することができることが好ましい。]
[0049] 本発明の組成物は、活性物質または補助物質をさらに含むことが好ましい。ネオマイシンまたはカナマイシンなどの抗生物質、チオメルサールなどの保存料、およびヒトアルブミン、ラクトース−ソルビット、ソルビット−ゼラチン、ポリゲリンまたはMgCl2もしくはMgSO4などの塩などの安定剤の添加が特に好ましい。通常、アミノ酸、ポリサッカライドおよび(バッファー)塩を添加剤として使用してもよいことが好ましい。]
[0050] 本発明の生ワクチンの調製では、ヒトに投与される予定である場合には、非形質転換宿主細胞を使用することが推薦できるが、これは、この方法では、特性の変化の危険(例えば、新規の、望ましくない突然変異の容易な導入)およびこれらの細胞の成分の汚染の危険の両方が避けられるからである。]
[0051] 本発明はまた、好ましくは、単離されるか、精製された、本発明の突然変異したウイルスのカプシドタンパク質をコードする核酸に関する。前記核酸分子は、宿主において自己複製することが好ましく、カプシドタンパク質をコードする核酸配列に加えて、RNA複製およびビリオン形成に必要なフラビウイルスゲノムのさらなる核酸を含み得る。上記のように、カプシドタンパク質をコードする核酸は、野生型ウイルス核酸と比較して1つの欠失だけ含む場合があり、これは、欠失に隣接する置換にもつながり得る。隣接するアミノ酸、またはそのコードするトリプレットの後に、フレームシフトは生じない。同様に、本発明はまた、好ましくは、単離された、または精製された形態の、突然変異したウイルスのカプシドタンパク質自体を提供する。これらの核酸またはタンパク質はまた、医薬組成物、好ましくは、ワクチンの形態で提供され得る。]
[0052] 特に、ワクチンの形態のこのような核酸またはタンパク質調製物はまた、核酸に加えて、プラスミドワクチンに対してFDAによって推奨されるように、ネオマイシンまたはカナマイシンなどのアミノグリコシド抗生物質を含み得る。先行技術では、「裸の」核酸(例えば、引用により本明細書に含まれる、WO90/11092、WO94/29469、WO97/47197参照のこと、リポソーム媒介性核酸導入、好ましくは、(好ましくは、生分解性)ミクロスフェアを用いる核酸導入、...)またはそれらの組合せもしくは混合物を用いるワクチン接種について、一連の非常に多くの非常に多様な戦略が記載されている。]
[0053] 生ウイルス組成物ならびに核酸またはカプシドサブユニット組成物は、フラビウイルス科感染の治療または予防のために調製および/または使用してもよい。「予防」は、絶対的な意味で理解されてはならない、すなわち、任意のさらなるフラビウイルス感染の出現が妨げられるが、予防的使用の意味では、フラビウイルス感染の危険を低減する。組成物は、免疫系のin vivo刺激および免疫化をもたらす。]
[0054] 最後に、本発明はまた、以下の工程を特徴とする本発明の改変されたウイルスを製造する方法に関する:
・上記で定義される欠失を有するカプシドタンパク質をコードする、フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を提供する工程と、
・適した宿主細胞において、フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を増殖させる工程と、
・宿主細胞によって増殖されたウイルス粒子を回収する工程。]
[0055] 本発明はまた、以下の工程を特徴とする、本発明の改変された核酸を製造する方法に関する:
・上記で定義される欠失を有するカプシドタンパク質をコードするフラビウイルス核酸を提供する工程と、
・核酸を、適したベクターに挿入する工程と、
・ベクターを用いて、適した宿主細胞を形質転換する工程と、
・前記宿主細胞において核酸を増幅する工程と、
・宿主細胞から核酸を回収する工程。]
[0056] 上記で定義される欠失を有するカプシドタンパク質をコードするフラビウイルス核酸は、当技術分野で公知の適当な逆遺伝子系または核酸合成系を使用して提供され得る。適した宿主細胞は、例えば、イー・コリ(E. coli)である。宿主細胞から回収される核酸は、RNAに転写され得る。]
[0057] さらに、核酸またはカプシドタンパク質は、さらに単離または精製し、医薬組成物、好ましくは、ワクチンに製剤してもよい。]
[0058] 好ましい宿主細胞は、ニワトリ胚細胞、初代ニワトリ胚細胞、ヒト2倍体細胞株(例えば、WI−38、MRC−5)、ベロ細胞、CHO細胞、HEK293細胞、PER.C6(登録商標)細胞、初代ハムスター腎臓細胞、初代イヌ腎臓細胞または2倍体胎児アカゲザル肺細胞から選択される。最も好ましいものは、ベロ細胞、特に、ATCCCCL−81およびBHK−21細胞である。]
[0059] ワクチンを製造するための宿主細胞株は、野生型ウイルス株での感染に対するこれらの細胞の感受性に基づいて選択され得る。野生型およびワクチン株(本発明のワクチンの場合には)の感染過程は、同一であると想定されるので、ワクチンを製造するための宿主細胞は、多量の対応する野生型ウイルスを産生する、当業者に公知の細胞から選択すればよく、またはこの特性は、一般に知られているウイルス学的技術、例えば、増殖曲線分析、ウイルス力価の決定およびウイルスタンパク質放出の定量によって容易に評価できる。]
[0060] 本発明を、以下の実施例によって、ならびにそれについて描かれた図面によって、より詳細に説明するが、制限されてはならない。]
図面の簡単な説明

[0061] 図1A−Cは、フラビウイルス科の3つの属各々の3種の代表物のカプシドタンパク質の親水性プロフィールを示す。負の値は、主に疎水性の特徴を有する領域を示す。カルボキシ末端疎水性領域は、ゲノム中で続くエンベロープタンパク質のシグナル配列である。例として、各タンパク質について、9アミノ酸残基のウィンドウサイズを用い、KyteおよびDoolittle(1982)のアルゴリズムに従って1回(上部)、7アミノ酸残基のウィンドウサイズを用い、HoppおよびWoods(1981)のアルゴリズムに従って1回(下部)親水性を算出し、例示した。
図2は、フラビウイルス科の3つの属各々の3種の代表物のカプシドタンパク質の配列アラインメントを示す。主に疎水性の特徴を有する(5のウィンドウサイズを用い、KyteおよびDoolittleに従って決定した)配列部分に、下線が引かれている。この場合には、それぞれの最もカルボキシ末端に配置される部分は、続くエンベロープタンパク質のシグナル配列に相当する。この部分には、欠失は全く存在してはならない。その他の(内部)疎水性部分は、弱毒化欠失にとって好ましい領域に相当する。以下の図とは対照的に、配列は、位置1にMを伴わずに示されている。
図3は、突然変異体CD36およびCD37(A〜F)の特性決定を示す。約106個のベロ細胞を、示されるウイルス調製物を用い、1のMOIで感染させた。野生型ウイルスおよび感染媒体を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。(A)RNA複製を、示される時点で、リアルタイムPCRによって測定した。(B)突然変異体CD36およびCD37のRNA輸送動態学を、リアルタイムPCRによってモニタリングした。(C)48時間の時点について、全RNA(内部および細胞外RNA)に対する、輸送されたもののパーセンテージを算出した。(D)ウイルス粒子の、上清への放出を、赤血球凝集アッセイによってアッセイした。(E)細胞毒性を、同サンプルの上清を使用してCytoTox 96非放射性細胞毒性アッセイ(Promega)によって評価した。崩壊細胞のLDH放出を表す、それぞれのOD490値が左側に示されている。(F)は、WNVカプシド欠失突然変異体CD37およびCD36の特異的感染性を示す。第2の部位突然変異体の特異的感染性を、ウイルスストック調製物(表1)における、感染単位(フォーカスアッセイ)に対するRNA(リアルタイムPCR)の比を決定することによって算出した。2回の独立した実験の対数平均が示されている;エラーバーは、標準偏差を示す。FFU(フォーカス形成単位)。
図4は、野生型(A)、欠失突然変異CD10およびCD36(B)、ならびに欠失突然変異CD7/3およびCD37(C)の配列の二次構造予測を示す。(A)では、WNV V76/1配列について、二次構造予測および疎水性ブロットが示されている。もっぱら、同様に、クンジンタンパク質C結晶構造中に存在する残基R23〜R98が示されている。(B)および(C)では、野生型および突然変異体配列の両方で欠失が例示されている(白抜きのボックス)。さらに、得られた末端切断型配列が示されており(下部のパネル)、対応する疎水性プロットも同様である(各突然変異体の下)。すべての二次構造予測は、PsiPredを使用して実施し、疎水性ブロットは、KyteおよびDoolittleのアルゴリズムに従って作製した。Wt、野生型。
(A)は、結晶構造と比較して、WNVのクンジンサブタイプの二次構造予測を示す(Dokland, T. et al., 2004)。二次構造予測は、PsiPredを使用して実施した(Jones, D. T., 1999);同様に結晶構造中に存在する、残基R23〜R98のみを分析した。二次構造予測(Pred)が、中央に示され、信頼値が上部に列挙されている(信頼値;9高い、0低い)。対応するアミノ酸配列(AA)が下に列挙されている;さらに、アミノ酸配列内、結晶構造内のヘリックス形成に関与する残基は、イタリック体および太字で強調されている。結晶構造中と同様、4つのヘリックス、すなわち、α−1〜α−4が設計される。(B)は、本発明に使用されたWNV単離物、すなわち、WNV NY99の二次構造予測を示す。(A)とは対照的に、アミノ酸配列は、イニシエーターMで始まり、C末端シグナル配列(G105−A123、下線が引かれている)も含む。(C〜F)は、カプシド欠失突然変異体CD7/3、CD37、CD10およびCD36の二次構造予測を示す。明確にするために、欠失の後ろに融合されたアミノ酸が、太字で強調されており;さらに、野生型配列(AおよびB)とは対照的に、融合された残基の数のみが示されている。(G〜H)は、それぞれ、突然変異体CD48およびCD48重複の二次構造予測を示し;CD48重複は、残基M16〜E39/L88〜A94の重複によってCD48から始まった。それぞれの残基は、濃い灰色および明るい灰色でそれぞれ強調されている。さらに、コイルドコイルを形成すると予測される残基には、下線が引かれており、欠失または重複のいずれかによって融合した残基は、太字で強調されている。H、ヘリックス;C、コイル;E、延長された(β鎖/シート)。
(A)は、WNV NY99およびWNV、サブタイプクンジンのカプシドタンパク質配列のアラインメントを示す。分析は、BLAST(Altschul, S.F. et al., 1997)を使用することによって実施し、結晶構造中に同様に存在する残基に限定した(Dokland, T. et al., 2004)。(B)は、WNV NY99のカプシドタンパク質配列およびデング熱ウイルス2カプシドタンパク質のアラインメントを示し;分析は、(A)に記載のとおりに実施し、残基N15〜R98に限定した。番号付けは、WNV NY99の配列に従っている。Cons.、コンセンサス配列。
図7は、WNVカプシドタンパク質中の突然変異を示す。(A)突然変異体CD10およびCD7/3、それぞれの継代後に同定された、大きな欠失CD36およびCD37。カプシドタンパク質のヘリックス部分は、ボックスによって示されて、ヘリックスα2は、灰色で強調されている。大きな欠失の位置は、矢印によって示されている。さらに、CD36およびCD37の両方において自発的に欠失しているすべての残基を欠く、人工的大欠失突然変異体(すなわち、CD48)を構築した。正確なヌクレオチド欠失は、右側に示されている。(B)大欠失突然変異体の免疫蛍光分析。大欠失(すなわち、CD36、CD37およびCD48)を、感染性cDNAクローン中に遺伝子操作し、突然変異体を、示されるような野生型または突然変異体in vitro転写RNAを用いて、BHK−21細胞をトランスフェクトすることによって試験した。CD36(左)、CD37(中央)、CD48(右)。対照として、偽トランスフェクトされた細胞を使用した。トランスフェクションの48時間後、WNVタンパク質Eに対して交差反応性である、JEVタンパク質Eに対するポリクローナル抗体を使用する免疫蛍光染色によって、細胞内タンパク質E発現を可視化した。二次抗体として、抗ウサギFITCコンジュゲートを使用した。] 図2 図4 図7
[0062] 細胞培養で継代され得る、正常に機能しないWNVカプシド欠失突然変異体の構築および大欠失を有する突然変異体の選択。
試験手順
細胞およびウイルス。ベロ(ATCCCCL−81)細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS、PAA)、1.5%グルタミン(200mM、Cambrex)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(10,000U/mlペニシリン、10mg/mlストレプトマイシン、Sigma)を補給したイーグル最小必須培地(EMEM、Cambrex)で増殖させた。感染を、10%の代わりに2%FBSの存在下で実施した。in vitro転写されるRNAの導入に使用したBHK−21細胞は、Kofler, R.M. et al. (2002)に記載されるように、増殖培地(5%FBS、1%グルタミン、0.5%ネオマイシン(10mg/ml、Sigma)を補給したEMEM)および維持培地(1%FBS、1%グルタミン、0.5%ネオマイシンおよび15mMHEPES、pH7.4を補給したEMEM)で取り扱った。]
[0063] この研究に使用したWNV株は、元々、1999年にニューヨーク市から採取した死亡したカラスから単離した(Ernest Gould and Bob Shopeによって親切にも提供された、WNV NY99)。その単離後、感染性cDNAクローンの構築の前に、ウイルスをベロ細胞で3回継代した。]
[0064] WNVcDNAクローンの構築。WNV RNAは、Mandl, C.W. et al. (1997)によって記載されるように単離した。WNV cDNAの合成は、Roche Applied ScienceのcDNA合成キットおよび全WNVゲノムを対象とするのに適当な配列特異的プライマーを利用することによって実施した。これらのcDNAを、PacIおよびNotI制限部位を含有するプライマーを使用するPCRによるDNA断片の増幅に使用した。極めて5’末端および極めて3’末端の増幅のためのプライマーは、制限部位に加え、それぞれ、T7転写プロモーター配列(Mandl、C.W. et al., 1997)および肝炎δウイルスリボザイムをコードする配列(Varnavski、A.N. et al., 2000)を含んでいた。すべてのPCR断片を、テトラサイクリン耐性遺伝子をコードするBspEI−AatII断片を、多重クローニング部位(BspEI−SwaI−PacI−NotI−SwaI−AatII)を用いて置換することによって改変されたpBR322にクローニングした(Bolivar, F. et al., 1977)。]
[0065] 最終アセンブリー工程後に、2種のプラスミド、すなわち、T7転写プロモーターと、WNVゲノムの5’の3分の1のcDNA(bp1〜3339)とを含むWNV−K1ならびにWNVゲノムの3’の3分の2(bp3282〜11029)と、それに続いて、肝炎δウイルスリボザイムとを含有するWNV−K4が得られた。ユニークなBstEII部位(3321/3326)が、両プラスミド中に存在するので、in vitro転写のための全長DNA鋳型を、BstEIIを用いる酵素消化およびin vitroでの2種のプラスミドの連結によって作製した。]
[0066] すべての構築物は、大腸菌DH5α細胞で増幅し、全挿入部分(insert)の両鎖の完全配列決定によって特性決定した。]
[0067] WNVカプシド欠失突然変異体の構築。プラスミドWNV−K1内のカプシドタンパク質に欠失を導入するために、Gene Tailor位置指定突然変異誘発系(Invitrogen)を使用した。したがって、それぞれ、アミノ酸F53−I59およびI44−F53を欠く、突然変異体CD7/3およびCD10を構築した。]
[0068] In vitroRNA転写およびトランスフェクション。T7RNAポリメラーゼを用いるIn vitro転写(Ambion T7 Megascript転写キット)およびエレクトロポレーションによるBHK−21細胞のトランスフェクションを、これまでの研究に記載のとおりに実施した(Elshuber, S. et al., 2003;Kofler、R.M. et al., 2002)。リアルタイムPCR分析において標準として必要とされる転写反応の場合には、WNV−K1の、BstEIIでの消化によって作製された鋳型DNAを、DNアーゼIとともに、37℃で15分間インキュベートすることによって分解し、RNAを、RNeasy Miniキット(QIAGEN)を使用することによって、組み込まれていないヌクレオチドから精製し、分離した。RNA濃度を、バンド強度から推定するか、またはRNA鎖濃度を決定するために分光光度法で測定した。]
[0069] 免疫蛍光染色。WNV特異的タンパク質の細胞内発現を、エンベロープタンパク質の間接免疫蛍光(IF)染色によって調べた。したがって、RNAがトランスフェクトされた細胞を、24ウェルプレートに播種し、増殖培地を供給し、トランスフェクションの20時間後に維持培地と交換した。24または48時間後、細胞を、固定および透過処理のために1:1アセトン/メタノールで処理した。WNV Eタンパク質を特異的に検出するために、日本脳炎ウイルスエンベロープタンパク質に対する交差反応性ポリクローナル抗体を使用した(希釈1:50)。染色は、製造業者によって示唆されるように二次フルオレセイン−イソチオシアネートコンジュゲート抗ウサギ抗体(Jackson Immuno Research Laboratories)を用いて実施した。]
[0070] 赤血球凝集アッセイ。感染細胞の上清中のWNVウイルスおよび/またはサブウイルス粒子の検出のために、ウイルスエンベロープタンパク質との相互作用によって誘導される赤血球の凝集に基づく迅速アッセイを適用した(Guirakhoo, F. et al., 1989;Clarke, D.H and Casals, J., 1958)。手短には、ウイルス上清を、粒子安定化のための0.4%のウシ血清アルブミンを含有するホウ酸緩衝生理食塩水(120mM塩化ナトリウム、50mMホウ酸ナトリウム、pH9.0)で1:1希釈した。続いて、この混合物を、さらに希釈して、幾何学的希釈列を得た。丸底96ウェルプレート中で、希釈したサンプル各50μlを、同量のガチョウ赤血球の0.5%溶液と混合し、室温で3時間インキュベートした。沈降した赤血球がないことによって、ウイルスによって誘導された赤血球の凝集が眼に見え、目視検査によってプレートの検査を実施した。]
[0071] 突然変異体安定性。トランスフェクトされた突然変異体の遺伝的安定性をアッセイするために、トランスフェクトされた細胞の上清を、感染のエンドポイントが達成されるまで希釈した。次いで、エンドポイントに対応する上清を、新鮮な細胞に移し、これらの継代を少なくとも2回反復した。続いて、RNAを単離し、Roche Applied ScienceのcDNA合成系および標準PCRおよび配列決定プロトコールを使用して配列分析を実施した。]
[0072] ウイルスストックの製造。ウイルスストック製造のために、ベロ細胞を、上記のように増殖培地で増殖させた。感染は、in vitro転写された突然変異体または野生型RNAを用いるBHK−21細胞のトランスフェクションに由来する細胞の上清を用いて実施した。続いて、感染ベロ細胞を、FBSが、1%ウシ血清アルブミンおよび15mMHEPES、pH7.4と置き換えられている増殖培地で維持した。CPEの発症に続いて、低速遠心分離(Avanti JA−12ローターにおいて、4℃、10,000rpmで30分)によって上清を細胞片から清澄化し、−80℃でアリコートで保存した。]
[0073] 結果
2種の部分cDNAクローンからの感染性WNVの再構成。WNVカプシド欠失突然変異体の作製のために、感染性WNV cDNAクローンを構築することがまず必要であった。したがって、実験手順の節に記載されるように、WNVのゲノムを、2種の部分cDNAとしてプラスミドpBR322にクローニングした。したがって、2種のプラスミド、それぞれ、WNVゲノムの5’の3分の1および3’の3分の2を含有するWNV−K1およびWNV−K4を作製した。全長感染性RNAを作製するために、プラスミドWNV−K1およびWNV−K4をin vitroで連結し、連結生成物をin vitro転写の鋳型として利用した。続いて、全長ゲノムRNAを使用して、BHK−21細胞をトランスフェクした。ウイルス複製およびタンパク質の発現について試験するために、トランスフェクトされた細胞を免疫蛍光によって調べた。エレクトロポレーションの24時間後、陽性細胞の数は、細胞の10%を超えなかった;これは、in vitroで連結されたDNA鋳型が使用される場合の通常の結果である。しかし、エレクトロポレーションの48時間後、細胞の100%が、免疫蛍光において陽性結果を得、このことは、周囲の、トランスフェクトされていない細胞に感染できるウイルスが生じたことを示した。野生型ウイルスの感染性は、新鮮BHK−21またはベロ細胞への上清の移動およびその後、免疫蛍光および赤血球凝集アッセイによって試験することによって検証した。したがって、感染性WNV cDNAクローンが成功裏に構築された。]
[0074] WNVカプシド欠失突然変異体の構築および試験。WNVに対する生弱毒化ワクチン候補を作製するために、WNVカプシドタンパク質をコードする領域に欠失を導入した。この技術は、実験動物モデルにおいて、ダニ媒介性脳炎ウイルスワクチンを用いて、高度に保護的な免疫応答を誘発するためにこれまでに成功裏に使用されている(Kofler, R.M. et al., 2002;Kofler, R.M. et al., 2003)。その目的のために、7(F53〜I59)および10(I44〜F53)個のアミノ酸の欠失を、WNVゲノムの5’の3分の1を含有するプラスミドWNV−K1中に存在するカプシドタンパク質をコードする領域に導入した。両欠失とも、中央の疎水性配列と部分的に重複するヘリックスα2に影響を及ぼした(Markoff, L. 1997;Ma, L. et al., 2004)。CD7/3およびCD10と名づけられた得られた突然変異体を、先の節に記載されるように、その複製し、タンパク質を発現する能力について試験した。野生型RNAがトランスフェクトされた細胞およびトランスフェクトされていない細胞を、それぞれ、陽性および陰性対照として使用して、エレクトロポレーションの24時間後にエンベロープタンパク質の細胞内発現を調べた。予想通り、2種突然変異体ならびに野生型対照は、複製し、エンベロープタンパク質を発現できることが、細胞の約10%についての陽性免疫蛍光結果によって示された。]
[0075] エレクトロポレーションの48時間後、WNVカプシド欠失突然変異体の、周囲の、トランスフェクトされていない細胞に感染する能力を、免疫蛍光染色によって評価した。上記に記載されるように、エレクトロポレーション後24時間から48時間への陽性細胞の数の増大は、トランスフェクトされたウイルスゲノムの感染性を示す。実際、野生型対照については、エレクトロポレーションの48時間後に100%の細胞が陽性に染色された。対照的に、突然変異体CD7/3およびCD10については、感染性は、大幅に低減し、後者の突然変異体は、感染性ウイルス後代をほとんど産生できなかった。]
[0076] 上清が感染性物質を含んでいたかどうかをさらに評価するために、さらに、感染細胞によるウイルス抗原の排出を調べるために、エレクトロポレーションの48時間後に回収した上清を用いて単層のベロ細胞を感染させた。感染後6日目に、上清中のエンベロープタンパク質含量を赤血球凝集アッセイによって分析した。すべての突然変異体について、エンベロープタンパク質の排出、したがって、感染性も検出可能であった。しかし、突然変異体CD7/3およびCD10は、野生型よりも大幅に少ない粒子しか排出せず、突然変異体CD7/3およびCD10の、赤血球凝集アッセイによって調べた力価は、それぞれ、2倍および10倍の減少を示した。]
[0077] 要約すると、突然変異体CD7/3およびCD10は、感染粒子の産生に関して野生型とは異なり;免疫蛍光および赤血球凝集アッセイの両方とも、突然変異体の感染性は損なわれていると示した。]
[0078] 複数回のエンドポイント継代を実施することによる大欠失突然変異体の選択。細胞培養増殖特性が改善された突然変異体を選択するために、突然変異体CD7/3およびCD10をベロ細胞で3回継代したが、これらの実験を通じて、感染性のエンドポイントに力価測定した上清を使用した。興味深いことに、突然変異体の、細胞培養物で増殖する能力は改善されたと、赤血球凝集アッセイによって調べられた。表現型におけるこれらの変化が、カプシドタンパク質配列内のさらなる変更の直接的な結果であるかどうかを調べるために、感染細胞の上清からウイルスRNAを単離し、RT−PCRおよび配列分析に付した。特に、カプシドタンパク質をコードする領域の配列決定によって、このような突然変異の出現が実際に検証された。驚くべきことに、元の欠失がさらに拡大された突然変異が同定された。したがって、欠失突然変異体CD7/3およびCD10の継代は、それぞれ、37個のアミノ酸および36個のアミノ酸の欠失(CD37およびCD36)の出現をもたらした。欠失の正確な位置は、表1に列挙されている。全ゲノムが分析された場合に、さらなる突然変異は同定されなかったということは注目される。]
[0079] 続いて、実験手順の節に記載されるように、ウイルスストックを製造した。元の突然変異体については、第2の部位の突然変異が迅速に出現するのでウイルスストックの製造は可能でなかったということは注目すべきことである。対照的に、CD37およびCD36突然変異体の両方とも、>107FFU/mlの力価を有するウイルスストックの製造が可能であり、マウス脳継代を実施する必要もなかった。2種のウイルスストック調製物を、3回のエンドポイント継代に付し、配列分析を実施して、それらが安定なままであり、さらなる突然変異が出現していないことを確実にした。したがって、両突然変異体の遺伝的安定性が確認された(表1)。]
[0080] 要約すると、ベロ細胞で複数回の継代を実施することによって、7個および10個のみのアミノ酸を含む元の突然変異体と比較して、細胞培養中で容易に継代され得る、カプシドタンパク質中の別の場所に突然変異を含まない大きなカプシド欠失突然変異体が同定された。さらに、CD37およびCD36突然変異体の両方とも、CD7/3およびCD10欠失とは対照的に、遺伝的に安定であり、高力価ウイルスストックの製造を可能にした。欠失を拡大することが、細胞培養増殖特性を改善することであるという知見は、実際驚くべきものであった。in vitro転写されたRNAのトランスフェクションの48時間後の免疫蛍光染色(図7B)は、突然変異体CD36およびCD37が実際に生存可能であることを示唆した。最後に、このような大欠失が野生型に復帰する可能性がないということを注記することが重要である。] 図7B
[0081] 細胞培養物における欠失突然変異体CD37およびCD36の特性決定
実験手順
RNA複製および排出(export)。細胞内RNA複製を、これまでに記載されるとおりであるが(Kofler, R.M. et al., 2006;Orlinger, K.K. et al., 2006)、わずかに改変してリアルタイムPCRによってモニタリングした。手短には、6ウェルプレートで増殖させたベロ細胞を、1.0の多重感染度(MOI)のWNV野生型および突然変異体ウイルスストック調製物とともにインキュベートした。1時間後、細胞単層を洗浄し、1%BSAと、FBSの代わりに15mMHEPESとを含む増殖培地を供給した。選択される時点で、トリプシンインキュベーションによって細胞を剥離し、1%BSAを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.4)で2回洗浄した。これらの細胞から細胞質RNAを精製し(RNeasy miniキット、Qiagen)、これまでの研究に従って(Kofler, R.M. et al., 2006;Orlinger, K.K. et al., 2006)、リアルタイムPCR(PE Applied Biosystems)定量化に付した。それぞれのプライマー(5’−TCAGCGATCTCTCCACCAAAG−3’、5’−GGGTCAGCACGTTTGTCATTG−3’)およびプローブ(5’−Fam−TGCCCGACCATGGGAGAAGCT−Tamra−3’)は、WNVゲノムRNAのエンベロープ遺伝子内の領域を標的とした。RNA相当量(RNA equivalent)は、陰性対照細胞の細胞溶解物中の段階希釈し、同一プロトコールに従って精製された既知濃度のRNA調製物に基づいて、標準曲線から最終的に決定した。]
[0082] トランスフェクトされた細胞の上清中RNA含量は、Orlinger, K.K. et al. (2006)において最近公開されたように測定した。したがって、リアルタイムPCRによる定量化に先立って、上清のアリコートを、低速遠心分離によって清澄化し、RNAを、QIAampウイルスRNA Miniキット(QIAGEN)を製造業者によって示唆されるように使用して精製した。RNA排出(export)は、上清中のRNA相当量(RNA equivalent)と、細胞内および細胞外RNAの両方を含む全RNA調製物のものの間の比を求めることによって最終的に算出した。]
[0083] 細胞毒性アッセイ。増殖培地がBSAを含まなかったということを除いて、RNA複製および排出実験と同様に、ベロ細胞を6ウェルプレート中に播種し、1.0のMOIでWNVストック調製物を用いて感染させた。上清のアリコートを、96ウェルプレートに移し、CytoTox 96非放射性細胞毒性アッセイ(Promega)を製造業者の使用説明書に従って使用して、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を測定することによって細胞毒性を評価した。]
[0084] プラーク形態学および免疫細胞化学。ベロ細胞を、12ウェルプレートで80%コンフルエンスに増殖させ、感染培地で段階希釈したウイルス懸濁液とともに1時間インキュベートした。続いて、細胞に、5%FBS、1.5%グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、15mMHEPESおよび0.25%アガロース(Sigma)を含有するEMEMをオーバーレイした。感染後4〜6日の範囲のインキュベーション期間後にプラーク形態学を決定した。したがって、細胞を固定し、4%ホルムアルデヒドおよび0.1%クリスタルバイオレットを含有する溶液を用いて染色した。]
[0085] 感染単位またはフォーカス形成単位(FFU)を、免疫細胞化学によって決定した。2〜4日間のインキュベーションに続いて、アガロースオーバーレイを除去し、1:1アセトン/メタノールを用いて細胞を固定した。細胞を、5%ヒツジ血清を含有するPBSpH7.4を用いて、室温で30分間再水和した。続いて、細胞を、0.2% Tweenおよび3%ヒツジ血清を含むPBS pH7.4で1:3000希釈された、WNV特異的ポリクローナル抗血清(gamma−WN/KIS/2)とともに37℃で1時間インキュベートした。細胞を、0.2% Tweenおよび3%ヒツジ血清を含有するPBS pH7.4で2回、0.2% Tweenおよび3%ヒツジ血清を含有するTBSバッファー(137mM塩化ナトリウム、3mM塩化カリウム、25mM Tris pH8.0)で1回洗浄した。抗ウサギアルカリホスファターゼコンジュゲート二次抗体の1:400希釈とのインキュベーションを、0.2% Tweenおよび3%ヒツジ血清を含むTBSバッファー中、室温で45分間実施した。同バッファーで2回洗浄した後、SIGMAFAST(商標)Fast Red TR/Naphthol AS−MXとともに10分間インキュベートすることによってWNV特異的フォーカスを検出した。]
[0086] 結果
突然変異体CD36およびCD37のRNA排出(export)および特異的感染性は、野生型WNVと比較して中程度に低減されている。全疎水性ドメインの大部分を含むタンパク質Cの3分の1超を欠くにもかかわらず、突然変異体CD36およびCD37は、感染性であり、遺伝的に安定であることが見出された。その複製、排出および感染する能力を詳細に特性決定するために、野生型ウイルスと比較する定量的試験を実施した。ベロ細胞を、MOI1にてウイルスストック(1×107FFU/ml)を用いて感染させ、細胞内RNA合成および上清へのRNA排出の両方を、リアルタイム定量的PCR(qPCR)によって評価した。図3Aに示されるように、両突然変異体の細胞内RNA複製は、感染後24および48時間で野生型と同様であった。感染後72および96時間で、突然変異体CD37の細胞内RNA値は、依然として野生型レベルのままであったのに対し、突然変異体CD36のものは低下した。この低下は、強いCPEを伴い、これらの時点での細胞数の強力な減少を引き起こした。確認するために、感染細胞の上清への乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を測定することによって、目視によって観察されたCPE、細胞毒性を、定量的に評価した。図3Eに示されるように、突然変異体CD36に感染した細胞からのLDH放出は、感染後48時間まで野生型および突然変異体CD37と同様の範囲内にあった。対照的に、後の時点では、CD36感染細胞の上清中のLDHレベルは、その他のものよりも大幅に高く、このようにして、その高い細胞毒性が確認され、このことは、感染後72および96時間でのCD36の細胞内RNA値の低減は、実際は過剰の細胞死の結果であったということを示唆する(図3Aおよび3Eを比較されたい)。]
[0087] 上清へのRNA放出の定量化は、タンパク質C欠失突然変異体と野生型ウイルス間で中程度の相違を示した。突然変異体CD36および特にCD37は、感染後24時間で、上清中に野生型よりもウイルスRNAを放出しなかった(図3B)。しかし、後の時点でCD37は、野生型レベルに達したのに対し、CD36は、おそらくは、この突然変異体の顕著な細胞毒性によって引き起こされる上記の産生細胞の喪失のために、すべての時点で野生型対照よりもおよそ1桁低いままであり、48時間後に値は低下した。突然変異体および野生型RNAの排出効率をより良好に比較するために、上清中に放出される全(細胞外および細胞内)RNA相当量(RNA equivalent)のパーセンテージを、48時間の時点で算出し、その時点で、細胞毒性の効果は依然低く、サンプル間で同程度であった。図3Cに例示されるように、突然変異体CD36およびCD37の排出効率は、野生型の値の約3分の2および半分であり、このことは、突然変異したカプシドタンパク質は、RNAのパッケージングおよび/またはビリオンのアセンブリーにおいては明らかに効率が低いが、依然として、感染細胞から全RNAの相当なパーセンテージの排出を促進できたということを示す。ウイルス粒子の排出をさらに調べるために、ウイルスRNAの定量化に使用したものと同じ上清を、赤血球凝集アッセイに付した。図3Dに示されるように、この分析の結果は、図3Bに示されるRNAデータと良好に一致した。突然変異体CD37については、ウイルス粒子の放出は遅れたが、最後の時点では、ほぼ野生型レベルに達した。対照的に、突然変異体CD36は、RNA値において観察されたおよそ10倍の相違と同様に、すべての時点で野生型よりもおよそ3log2希釈分(すなわち、およそ8倍)低いままであった。]
[0088] 突然変異体および野生型ウイルスの特異的感染性を定量的に比較するために、ウイルス調製物を、これらの調製物中のRNA相当量(RNA equivalent)の数(ビリオンの数に相関すると推測される)を調べるためのqPCRおよび感染単位を定量化するためのフォーカスアッセイに付した。次いで、FFUに対するRNA相当量(RNA equivalent)の割合を算出し、結果が図3Fにプロットされている。この比は、野生型ウイルスについては約10であった(すなわち、10のRNA相当量/ビリオンのうち1つが、感染性フォーカスを引き起こした)のに対し、2種の欠失突然変異体の場合には10から100倍高く、このことは、特異的感染性の低減を示した。]
[0089] 結論として、定量的比較によって、欠失突然変異によって引き起こされるウイルスの排出および進入の両方の、中程度ではあるが意味のある障害が示された。]
[0090] 細胞培養物におけるウイルス粒子の増殖特性。プラークおよびフォーカス形態学の変更は、毒性に関する変化の良好な指標である。したがって、突然変異体CD37およびCD36の、ベロ細胞単層上でプラークを形成する能力を評価した。6日間インキュベートした後であっても、両突然変異体についてはプラークが同定できなかったのに対し、野生型ウイルスプラークは、8から15mm(12.6+/−2.4mm、表2)の間のプラークサイズに達した。対照的に、すべての突然変異体は、ベロ細胞単層上でフォーカスを形成できた。しかし、これらは、野生型フォーカスと比較すると、少なくとも4倍小さかった(表2)。]
[0091] 突然変異体CD37およびCD36の、正常に機能しないプラーク形成ならびにフォーカスサイズの減少は、すでに弱毒化表現型をすでに示唆した。細胞培養増殖をより詳細に調査するために、特異的感染性、すなわち、免疫細胞化学によって決定される、感染粒子に対するRNA相当量の比を調べた。図3Fで示されるように、両突然変異体について特異的感染性は大幅に低減した、すなわち、言い換えれば、1感染単位(FFU)を製造するのに、より多くのRNA相当量が必要であった。]
[0092] 要約すると、WNVカプシド欠失突然変異体は、野生型からの細胞培養における増殖特性の変更を示す。細胞培養における観察された増殖特性は、動物モデルにおける弱毒化表現型の良好な指標であるので重要である。]
[0093] 生弱毒化ワクチンとしての大欠失突然変異体
実験手順
動物モデル。動物モデルを確立するために、4週齢の雌のBALB/cマウスに、種々の用量のWNV野生型ウイルスを用いて腹膜内に(i.p)接種した。陰性対照としても使用した細胞培養培地で、希釈を実施した。感染後、動物の生存を28日間モニタリングした。動物の50%が感染に屈する用量(LD50)が、接種用量の算出の基礎を提供し、これは100倍LD50に設定した。]
[0094] 突然変異体ウイルスのIn vivo特性決定。突然変異体ウイルスの毒性および免疫原性を特性決定するために、4週齢の雌のBALB/cマウスに、WNVストック調製物の段階希釈を用いて腹膜内に(i.p.)接種した。野生型ウイルスおよび細胞培養培地を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。4週間の観察期間の後、尾静脈経由で生存マウスから血液を採取した。プレートのコーティングのために、50μlの0.25μg/mlホルマリン不活化WNVを使用した点を除いて、Heinz et al. (1983)に記載されるように、ELISAによってセロコンバージョンを検出した。セロコンバージョンされたマウスが、防御免疫を獲得したかどうかを試験するために、野生型株の接種用量を用いてマウスに接種した(以下参照のこと)。生存を、接種後4週間記録した。]
[0095] 結果
動物モデル。動物モデルを確立するために、10匹の4週齢の雌のBALB/cマウスの群に、野生型WNVの段階希釈を用いて腹膜内に播種した。致死的に感染したマウスは、感染後7から10日の間に感染に屈した。表3に示されるように、2つの高投与量群(50および500FFU)では、生存した動物はなかった。対照的に、5および0.5FFUを用いてマウスに接種した場合には、それぞれ、10匹のうち8匹および9匹のうち7匹のマウスが野生型ウイルスでの感染で生存した。0.05FFUの野生型ウイルスを適用した場合には、致死的に感染した動物はなかった。さらに、陰性対照群のすべての動物が生存した。興味深いことに、すべての生存動物は、疾患のいかなる徴候も示さなかった。要約すると、これらのデータは、生存が実際に用量依存性であることを示した。さらに、動物モデルの信頼性が確認された。]
[0096] 動物の50%が感染に屈する用量(LD50)が、ウイルスの毒性を評価するための重要なパラメータである。さらに、このパラメータによって、免疫処置試験のための接種用量の算出が可能となり、接種用量は、通常、100倍LD50に設定される。表3に示される実験について、LD50は、5および50FFUの間にある。結果として、約100倍LD50または接種用量は、103FFUに相当した。]
[0097] 動物モデルにおけるワクチン候補の試験。動物モデルにおいて突然変異体CD37およびCD36を試験するために、4週齢の雌のBALB/cマウスを、種々の用量の両ワクチン候補を用いて免疫処置した。末梢接種すると、毒性の神経浸潤性WNV株は、ほとんどすべての感染動物において致死性脳炎を引き起こすのに対し、弱毒化株は、特異的抗体反応を誘導する無症状性感染を引き起こす。各候補について、群あたり10匹の動物の7群を、100から106FFUの範囲の用量を適用することによって試験した。表3で示されるように、マウスに高用量のワクチン候補を接種した場合でさえ、すべての動物が生存した。結果として、LD50は、>106FFUであった。さらに、動物のうち、疾患の徴候を示したものはなく、これは、突然変異体CD37およびCD36の低毒性を意味する。]
[0098] 感染の4週間後、ワクチン接種された動物のセロコンバージョンを、実験手順の節に記載されるように、WNV特異的ELISAによって評価した。突然変異体CD37およびCD36を用いた免疫処置が、保護的免疫応答をもたらしたかどうかを試験するために、動物に野生型ウイルスの致死用量(103FFU)を用いて接種した。表3に示されるように、セロコンバージョンは、保護と良好に相関した。]
[0099] 要約すると、CD37およびCD36両方の低毒性および保護の可能性が明確に実証された。]
[0100] ]
[0101] ]
[0102] ]
[0103] 48個のアミノ酸を欠く突然変異体(CD48)の特性決定
実験手順
突然変異体構築。突然変異体CD48では、突然変異体CD37およびCD36の欠失が組み合わされた。したがって、CD48は、D39E突然変異および残基G40からE87を含む欠失を含んでいた。構築は、標準クローニング手順を使用して実施した(実施例1も参照のこと)。]
[0104] 突然変異体安定性。突然変異体安定性を、実施例1の実験手順の節に記載されるように評価した。]
[0105] 結果
突然変異体CD48の特性決定。この突然変異体は、残基G40からE87の範囲の48個のアミノ酸を欠く。さらに、突然変異体CD48は、突然変異体CD36内で同定されたD39E突然変異を含む。しかし、突然変異体CD48を用いる継代実験は、この突然変異体は不安定であると示した。したがって、48個のアミノ酸欠失に隣接する残基、すなわち、M16〜D39EおよびL88〜A94の迅速に出現する複製を同定した。この複製は、細胞培養増殖特性をわずかに改善したが、安定な、高力価ストックの製造は依然として不可能であった。]
[0106] この結果は、細胞培養における増殖特性を大幅に低減せずに欠失され得るアミノ酸残基の数は、限定されるということを示す。したがって、カプシドタンパク質のおよそ3分の1の欠失は、良好な耐容性を示したが、48個のアミノ酸欠失は、タンパク質機能を大幅に損ない、細胞培養で継代される能力を回復するには、さらなる突然変異(例えば、観察される複製)を必要とする。]
[0107] 選択されたWNVカプシド欠失突然変異体の二次構造予測
実験手順
二次構造予測:ウィンドウサイズ10を使用し、PsiPred(Jones, D. T. 1999)およびpepcoil(Embossソフトウェアパッケージ;Rice, P. et al., 2000)を使用して二次構造予測を実施した。]
[0108] 結果
WNV(サブタイプクンジン)3D構造での欠失の位置。最近、WNVカプシドタンパク質(クンジンサブタイプ)の結晶構造が解析された(Dokland, T. et al., 2004;タンパク質データバンク受託コード1SFK)。WNVカプシドタンパク質は、4つのαヘリックスからなり;結晶構造では、タンパク質は二量体を形成し、これが四量体に組織化される。各二量体は、上部にヘリックスα1、中央にヘリックスα2および底部にヘリックスα4を含む三層構造と類似し;対照的に、ヘリックスα3は、対では組織化されず、代わりにスペーサーとして役立つと思われる。大欠失の導入が、タンパク質のコンホメーション全体を乱し、タンパク質機能を損ない得ると考える人もいるかもしれない。興味深いことに、このような大欠失、すなわち、CD37およびCD36が同定され;それにもかかわらず、これらの末端切断タンパク質は、感染性ウイルス粒子を形成し、高力価の、安定なウイルスストックを製造することができた。]
[0109] これらの大欠失の構造結果を解明するために、WNV結晶構造内のその位置を、PyMOLソフトウェア(DeLano, W.L., DeLano Scientific, San Carlos, Calif., 2002)を使用して調査した。突然変異体CD37は、ヘリックスα2のおよそ半分、全ヘリックスα3およびヘリックスα4のおよそ半分を欠く。結果として、ヘリックスα2およびヘリックスα4の残りが融合され、それによって、3層の代わりに2層が形成されると考える人もいるかもしれない。それにもかかわらず、2層構造の積み重ねによって、多量体形成およびカプシドアセンブリーが可能となり得る。同様に、ヘリックスα1の上層およびヘリックスα4の下層は、多かれ少なかれ影響を受けないままであるので、突然変異体CD36におけるヘリックスα2およびα3の除去は、2層構造の形成をもたらし得る。]
[0110] 対照的に、突然変異体CD48は、ヘリックスα2、ヘリックスα3およびヘリックスα4のほぼ半分を欠く。実施例4において記載されたように、この突然変異体は、増殖特性において大幅に損なわれている。突然変異体CD48の、この損なわれた細胞培養増殖特性は、欠失によって影響を受けなかったヘリックスα1と、2回転に減ったヘリックスα4は、2層構造を形成できないという知見によって説明することができる。]
[0111] 要約すると、突然変異体CD36およびCD37の共通の特徴は、全ヘリックスα3およびヘリックスα4の一部が除去されているが、ヘリックスα1は変化していないままであるということである。結晶構造の綿密な調査に基づいて、ヘリックス内層の除去は、それでもなお機能的である2層構造をもたらすということが見出される。対照的に、CD48突然変異体では、2層構造の形成が損なわれると見出された。]
[0112] 二次構造予測。構造衝撃をより詳細に調査するために、二次構造予測分析を実施した(PsiPred Jones, D. T. 1999)。まず、WNV(クンジンサブタイプ)配列を、対応する結晶構造と比較することによって予測の信頼性を評価した(Dokland, T. et al., 1997)。図5Aに示されるように、二次予測および結晶構造は、極めて良好に適合し;やはり結晶構造中に存在する残基のみが分析されたということを注記することが重要である。図5Bは、この分析に使用された単離物の二次構造予測を示す。これでは、全カプシドタンパク質配列、すなわち、M1〜A123が分析された。クンジン配列の分析と同様に、4つの内部ヘリックスα1からα4が予測され(図5Aおよび図5Bを比較されたい);さらに、極めてC末端の大ヘリックスが予測された。このヘリックスは、ウイルス成熟の際にウイルスNS2/B3プロテアーゼによって切断除去されるシグナル配列に相当する。]
[0113] 図5Cでは、突然変異体CD7/3二次構造予測が示されている。先に記載されたように(実施例1)、この突然変異体は、カプシドタンパク質のヘリックスα2への7個のアミノ酸の欠失の導入によって構築された。結果として、ヘリックスα2は大幅に短くなり、これはCD7/3突然変異体配列の二次構造予測によっても観察された(図5Bと図5Cを比較されたい)。しかし、突然変異体CD7/3について予測される4つのヘリックスの代わりに、CD37では30個のさらなる残基の除去が、後者の1つがヘリックスα2および4の残りからなる2つのヘリックスの形成をもたらした(図5Cおよび図5Dを比較されたい)。CD7/3突然変異体中のヘリックスα2のより低い信頼値と比較した場合に、このα2/4融合ヘリックスの予測の信頼値は増大していたということを注記することが重要である。このことは、タンパク質の構造は、さらなる30個のアミノ酸残基の除去によって安定化されたということを示す。]
[0114] 突然変異体CD10(図5E)の二次構造予測は、ヘリックスα2の残部がコイルド残基の長いストレッチで置換されたことを示唆した。この領域は、タンパク質安定性を干渉し得る。対照的に、CD36突然変異体中の36個のアミノ酸欠失は、ヘリックスα2および3の完全除去をもたらした。二次構造予測から、ヘリックスα1およびα4の融合に起因する1つの大きな単一のαヘリックスが示唆された(図5F)。この融合ヘリックスのN末端部分の数個の残基について、低い信頼値が観察されることは重要である。これは、代わりに、2つのヘリックスが形成されることを示し、これは、2層構造の重要性の仮説を支持する(これまでの節を参照のこと)。他方、さらに、単一の大きな融合ヘリックスはまた、ヘリックススタッキングおよびカプシドタンパク質アセンブリーに参加できると考える人がいるかもしれない。]
[0115] 図5Gでは、突然変異体CD48の二次構造予測が示されている。ヘリックスα1およびヘリックスα4の残部は、融合ヘリックスを形成する可能性があり;しかし、対応する信頼値は低く、構造は幾分不安定であるということが示唆された。対照的に、突然変異体CD48複製における残基M16〜E39/L88〜A94の複製は、高い信頼値を有する2つのヘリックスの形成をもたらし得る(図5Gと図5Hを比較されたい)。これらの2つのヘリックスは、突然変異体CD37およびCD36のものと同様に、2層構造を形成し、スタッキングプロセスに参加し得る。さらに、pepcoilプログラム(Embossソフトウェアパッケージ;Rice, P. et al., 2000)を使用することによって、突然変異体CD48およびCD48複製を分析した。興味深いことに、突然変異体CD48について、コイルドコイル構造が予測され(図5G);突然変異体CD48における複製は、おそらくは2つのコイルドコイルの形成をもたらし、それによって、そのヘリックススタッキングプロセスへの関与の仮説を支持する(図5H)。野生型配列では、残基L30〜D39およびK85〜N96についてコイルドコイルが同様に予測されたということを注記することが重要であり;興味深いことに、2つのコイルドコイルはまた、突然変異体CD48を除くすべてのその他の調査した突然変異体についても予測された。]
[0116] 要約すると、突然変異体CD7/3およびCD10の二次構造予測は、導入された欠失は、カプシドタンパク質を不安定化したということを示唆した。突然変異体CD37およびCD36におけるさらなる残基の除去は、3D構造ならびに二次構造予測の綿密な調査によって示されるように、タンパク質安定性を改善すると思われた。対照的に、突然変異体CD48中に存在する欠失は、単一の、安定性の低いヘリックスの形成をもたらし、突然変異体の安定化は、複製の間柄に応じて異なった。さらに、突然変異体CD48およびCD48複製の比較によって強調されるように、2つのコイルドコイルを形成できるヘリックスの存在は重要である。]
[0117] WNVおよびデング熱ウイルス配列および構造の比較
実験手順
配列保存。BLAST(Altschul S. F. et al., 1997)を使用することによって、配列保存を評価した。]
[0118] 結果
WNVおよびデング熱ウイルスカプシドタンパク質の相同性。今日までに、フラビウイルスカプシドタンパク質の2種の3D構造、すなわち、WNVのクンジンサブタイプの結晶構造およびデング熱ウイルスカプシドタンパク質の溶液構造が解析されている(Dokland, T. et al., 2004;Ma, L. et al., 2004)。クンジンカプシドタンパク質同様、デング熱ウイルスカプシドタンパク質は、4種のヘリックスからなり、二量体を形成する。興味深いことに、両構造は、比較的良好に重なり(Dokland, T. et al., 2004)、それによって、フォールドがフラビウイルスカプシドタンパク質間で保存されている可能性があるということが示される。さらに、この知見は、WNV NY99単離物について実施例1から5において記載される原則が、その他のフラビウイルスにも同様に適用され得るということを示唆する。この仮説をさらに支持するために、WNV NY99単離物の配列を、BLAST(Altschul, S.F. et al., 1997)を使用してWNVのサブタイプクンジンおよびデング熱ウイルスのものと比較した。図6Aおよび6Bに示されるように、WNV NY99は、WNVサブタイプクンジンおよびデング熱ウイルス、それぞれと94%および42%の同一残基を共有する。分析において同一ではないが、高度に保存される残基が含まれていた場合には、調査したカプシドタンパク質の相同性にさらに下線を引いた。したがって、WNV NY99の、WNVサブタイプクンジンおよびデング熱との配列相同性は、それぞれ、96%および62%であった。] 図6A
[0119] 要約すると、3D構造の調査および配列相同性の評価によって、フラビウイルスカプシドタンパク質は、高度に保存されたフォールドを採用しているということが示唆された。これは、その他のフラビウイルス、例えば、デング熱ウイルスについて、同様に有益な特性を有する大欠失突然変異体が構築できるということを示す。]
[0120] 参考文献
本明細書において引用する以下の参考文献は、その全体を引用により本明細書に含める。]
权利要求:

請求項1
フラビウイルス科の突然変異体ウイルスであって、カプシドタンパク質中に少なくとも20個の連続するアミノ酸の欠失を含み、前記欠失に隣接する、置換されていてもよいアミノ酸を除いて、カプシドタンパク質中に、さらなる欠失、置換または挿入突然変異を伴わないウイルス。
請求項2
カプシドタンパク質のカルボキシ末端疎水性領域が、欠失によって影響を受けないことを特徴とする請求項1に記載のウイルス。
請求項3
フラビウイルス、ペスチウイルスまたはヘパシウイルス、好ましくは、節足動物媒介性ウイルス、特に好ましくは、蚊媒介性ウイルスであることを特徴とする請求項1または2に記載のウイルス。
請求項4
黄熱ウイルス(YFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、デング熱ウイルス(DV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEウイルス)、ウエストナイルウイルス(WNV)、マレー渓谷脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、ポワッサンウイルス(PV)、ブタ熱ウイルス(CPFV)、ウシウイルス性下痢ウイルス(BDV)、ボーダー病ウイルス(BDV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)から選択されることを特徴とする請求項3に記載のウイルス。
請求項5
前記欠失が、少なくとも22個、好ましくは、少なくとも24、26、28、30、32個または34個の連続するアミノ酸のものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のウイルス。
請求項6
前記欠失が、最大48個、好ましくは、最大46、44、42、40個または38個のアミノ酸のものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のウイルス。
請求項7
細胞培養において継代され得、好ましくは少なくとも2継代後に、遺伝的に安定であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のウイルス。
請求項8
前記欠失が、野生型ウイルスカプシドタンパク質のαヘリックス2の少なくとも1個のアミノ酸、好ましくはヘリックス2のアミノ酸の少なくとも3分の1、より好ましくはヘリックス2のC末端アミノ酸を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のウイルス。
請求項9
前記欠失が、野生型ウイルスカプシドタンパク質のαヘリックス3の少なくとも1個のアミノ酸、好ましくはヘリックス3のアミノ酸の少なくとも3分の1、より好ましくはヘリックス3のアミノ酸の少なくとも3分の2、最も好ましくは全ヘリックス3を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス。
請求項10
前記欠失が、野生型ウイルスカプシドタンパク質のαヘリックス4の少なくとも1個のアミノ酸、好ましくはヘリックス4のアミノ酸の少なくとも3分の1、より好ましくはヘリックス4のN末端アミノ酸を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のウイルス。
請求項11
カプシドタンパク質の外側に突然変異を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のウイルス。
請求項12
請求項1から11のいずれか一項に記載のウイルスを含む、医薬組成物、好ましくは、ワクチン。
請求項13
前記ウイルスの101から107、好ましくは102から106、特に103から105感染単位を含むことを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
請求項14
抗生物質、保存料、安定剤、バッファー物質またはそれらの混合物をさらに含むことを特徴とする請求項12または13に記載の医薬組成物。
請求項15
請求項1から11のいずれか一項に記載の突然変異ウイルスのカプシドタンパク質をコードする核酸。
請求項16
請求項1から11のいずれか一項に記載の突然変異ウイルスのカプシドタンパク質。
請求項17
請求項15に記載の核酸または請求項16に記載のカプシドタンパク質を含む、医薬組成物、好ましくはワクチン。
請求項18
アミノグリコシド抗生物質、特にネオマイシンまたはカナマイシン、リポソーム、ミクロスフェアまたはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
請求項19
フラビウイルス科感染の治療または予防のための、請求項12から14、17または18に記載の組成物。
請求項20
請求項1から11のいずれか一項に記載の欠失を有するカプシドタンパク質をコードする、フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を提供する工程と、適した宿主細胞において、前記フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を増殖させる工程と、宿主細胞によって増殖されたウイルス粒子を回収する工程とを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の改変されたウイルスを製造する方法。
請求項21
宿主細胞が、ニワトリ胚細胞、初代ニワトリ胚細胞、ヒト2倍体細胞株、ベロ細胞、CHO細胞、HEK293細胞、PER.C6(登録商標)細胞、初代ハムスター腎臓細胞、初代イヌ腎臓細胞または2倍体胎児アカゲザル肺細胞から選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
請求項22
請求項1から11のいずれか一項に記載の欠失を有するカプシドタンパク質をコードするフラビウイルス核酸を提供する工程と、前記核酸を、適したベクターに挿入する工程と、前記ベクターを用いて、適した宿主細胞を形質転換する工程と、前記宿主細胞において前記核酸を増幅する工程と、前記宿主細胞から前記核酸を回収する工程とを特徴とする、請求項15に記載の改変された核酸を製造する方法。
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